Gait Analysis

歩行分析と神経反射

歩行

歩行は人間が直立して、他の場所に移動する基本的な動作であり、身体運動の基礎となる。

歩行評価

歩行運動を評価することは、筋骨格系、神経系の機能の評価につながる。
歩行周期
歩行周期とは,一側の踵が接地し,次に同踵が接地するまでの時間の間隔あるいは連続動作をいう。
歩行周期は2つの立脚相と遊脚相からなっており,さらに2つの両脚支持期と1つの単脚支持期から構成されている。

立脚相

立脚相は歩行周期の60%を占め,さらに5つの亜相に分類される。
接地初期(踵接地heel strike)
荷重応答期(足底接地foot flat)
立脚中期(単脚支持single?leg stance)
立脚終期(踵離地heel off)
立脚前期(足尖離地toe off)

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遊脚相

遊脚相は歩行周期の約40%ほどを占めており,さらに以下の3つの亜相に分類されている。
遊脚初期(加速期)
遊脚中期
遊脚終期(減速期)
両脚支持期

歩行の両脚支持期は,両足が接地している。正常歩行では,歩行周期に2回あり,その約20%ほどを占めている。この割合は,歩行が緩徐になると増加し,歩行速度が速くなると少なくなり,走行ではまったく消失してしまう。

単脚支持期

歩行の単脚支持期は,片足が接地している。正常歩行では,歩行周期に2回あり,その約30%を占めている。

正常歩行の各パラメータ
歩隔
歩幅
ストライド幅
骨盤側方移動
骨盤垂直移動
骨盤回旋
重心
正常ケーテンス

歩隔

正常の左右の足の間隔である歩隔は5~10cmである。この歩隔が正常より大きい場合,小脳性あるいは内耳性疾患による平衡障害,あるいは感覚障害をきたす糖尿病性などの末梢ニューロパチーが考えられる。いずれの症例であっても,バランスを保持するために歩隔が広く大きくなる。

歩幅

右踵が接地し,次に左踵が接地するまでの動作を一歩とし,この間の距離を歩幅という。
歩幅は正常では35~41cmで,左右で同じでなければならない。
年齢や性別で差があり,大人のほうが子供より大きく,男性のほうが女性より大きくなっている。身長によっても歩幅が変化し,背の高いほどこれが長くなる。さらに加齢,疲労,疼痛,疾患によって,歩幅は小さくなっていく。歩幅が左右とも正常の場合,歩行リズムは円滑である。
一側下肢に疼痛がある場合,できるだけ早く疼痛から免れようとするために,歩行リズムが変化する。

ストライド幅

右踵が接地し,次に再び右踵が接地するまでの動作がストライドであり,この進行方向の直線距離がストライド幅であり,実際には1歩行周期である。
ストライド幅の正常値は70~82cmである。

骨盤側方移動

骨盤の側方偏位とは,歩行中に立脚肢の上に重心をもってくるため,バランスを維持するために骨盤が側方へ移動することである。骨盤側方偏位の正常値は2.5~5cmであるが,左右足の歩隔が大きくなれば,この値が大きくなる。

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骨盤垂直移動(骨盤傾斜)

正常歩行では,骨盤の垂直偏位によって,重心の上下移動は5cm以下になるように保たれている。重心の頂点は立脚中期で,もっとも低い点は接地初期になる。

骨盤回旋

骨盤の回旋は骨盤と大腿骨がなす角度を小さくするもので,これによって足が床に対してつくる角度を減少させている。この回旋によって重心移動は減少し,つまり重心の下降を減少させている。
骨盤は遊脚肢側を4°前方に出し,さらに立脚肢側を4°後方に回旋し,全体で8°回旋している。gaitpelv
胸郭はバランスを保つために骨盤と反対側に回旋する。このような2つの反対方向の回旋力は互いに打ち消し合うことになり,歩行速度の調整機構としての役割を果たしている。

 

重心

正常な立位では第2仙椎前方5cmに位置する。
女性より男性のほうが肩部の筋隆起が大きいことから,重心、の位置は多少高くなっている。
歩行中の重心の垂直および水平移動は,骨盤内の5cm四方で「8の字」を描いている。

正常ケーテンス

単位時間内での歩数をケーデンスといい,通常1分間の歩数(step/min)で表している。正常で1分間90~120歩ほどである。

歩行周期

遊脚相

遊脚初期(加速期)
遊脚中期
遊脚終期(減速期)

立脚相

接地初期(踵接地)
荷重応答期(足底接地)
立脚中期(単脚支持)
立脚終期(踵離地)
立脚前期(足尖離地)

歩行の正常パターン

立脚相

接地初期(踵接地)
荷重応答期(足底接地)
立脚中期(単脚支持)
立脚終期(踵離地)
立脚前期(足尖離地)

接地初期

股関節:30~49°屈曲,内旋位
膝関節:僅かな屈曲あるいは伸展位
足関節:0°
足部:内反
後足部:回内位
骨盤:水平内旋位
体幹:両下肢の間
接地初期には,接地足にほとんど体重負荷はない。したがって,踵に疼痛が生じた場合,踵骨棘,骨挫傷,踵脂肪パッド挫傷,滑液包炎などが示唆されることになる。
膝の筋力低下がある場合,患者は手を使い膝伸展を行うか,踵を地面に強く打ちつけることによって膝関節を伸展位に「直す」ようにすることがある。
これらの筋力低下のうちには,たとえば,反射性抑制,ポリオ,膝内障,L2,3,4神経根症,大腿神経麻痺などがある。

荷重応答期

荷重応答期では,下肢で体重が支えられる否か無意識に決定を下している。
膝関節:15~25°屈曲位
股関節:屈曲、外旋位から伸展開始
骨盤:遊脚側で僅かな下降,内旋
体幹:立脚肢に移動
前足部:外反
足関節:底屈
後足部:回外位

立脚中期

立脚中期は立脚支持の静止期にあたる。足に加わる体重は足全体に均等に分布している。
骨盤:遊脚側に僅かに下がる
体幹:立脚肢上
股関節:外旋位10~15°最大伸展位
膝関節:屈曲開始
足関節:前足部に対して前方回旋しながら,5~8°背屈固定位になる。
前足部:外反
後足部:回外位
足部に疼痛が起こる場合,関節炎,硬直扁平足,中足骨/縦アーチ扁平化,底屈腱膜炎,Morton病などが考えられる。

立脚終期と前遊脚期

膝関節:50~60°屈曲位
股関節:屈曲開始,外旋から内旋
足関節:底屈
前足部:回外から回内位
骨盤:水平位,外旋
体幹:立脚側に移動
この時期の疼痛では,強剛母趾が示唆される。この強剛母趾がある場合,足の内側面での蹴り出しによって,中足骨頭が圧迫され疼痛が生じる。

遊脚相

遊脚初期(加速期)
遊脚中期
遊脚終期(減速期)

遊脚初期

股関節:屈曲、内旋
膝関節:屈曲60°最大屈曲位へ
骨盤:内旋,遊脚側に下降
体幹:立脚側に移動
足関節:底屈位から背屈位
後足部:回内位を保持
前足部:内反を保持

遊脚中期

股関節:屈曲、内旋位
膝関節:屈曲位
骨盤と体幹:前の遊脚初期と同様
足関節:
前足部:内反
後足部:回内位を保持

遊脚終期

膝関節:最大伸展位
股関節:屈曲、内旋位
足関節:背屈位
前足部:内反
後足部:回内位
体幹、骨盤:遊脚終期と同じ
視診と理学的検査

検者は患者の歩行を前面,後面,側面から観察し,さらにそれぞれの場面で近位部から遠位部へと観察し,さらに腰椎と骨盤から足関節および足部方向へと観察していく。このような方法によって評価を系統的に実施し,見落としを防ぐことができる。

前面からの観察

骨盤の側方傾斜
体幹の側方動揺
骨盤の水平回旋の有無
体幹や上肢が骨盤と反対方向に回旋しているかどうか
大腿骨や脛骨の内反状態
股関節の内・外旋状況
足部の位置
前面からの視診は,歩行周期中の体重を負荷する立脚相の観察に適している。
遊脚肢が外転あるいは分回しをしていないか,大腿や下腿の筋萎縮がないか,左右の足の幅についても観察する。

側面からの観察

腰椎前彎
股関節の屈曲や伸展制限の有無
膝関節の観察
・接地初期の十分な膝関節伸展と、後の足が床に接地するまでわずかな屈曲
・荷重応答期と立脚中期の間,多少屈曲した膝関節のコントロール
・前遊脚期から遊脚初期の間,膝関節の十分な屈曲
・歩行中に膝の過伸展の有無
足関節の観察
・接地初期の直後における足関節底屈
・立脚中期あるいは単脚支持相での背屈と続く踵離地直前の最大背屈位
・蹴り出時の十分な底屈
・身体各部の相互作用
・股、膝、足関節の運動の協調性の有無。
・歩幅が等間隔であるかどうか。
・一歩に要する時間が左右で異なっているかどうか。

後面からの観察

前面の観察と同じ解剖構造について観察する。身体各部の側方移動、異常な外転-内転運動についても観察する。
踵の上がりが左右同じであるか,踵の向きが内側あるいは外側であるか。
脊椎の側方運動や背部,殿部,大腿・下腿後部の筋の状態についても観察する。
患者は素足と履物を履いた状態で歩行を行う。
履物の観察に十分に時間をかけ,靴の踵や靴下の減りぐあい,靴の背側やしわの状態などをしらべる。さらに,足の脂肪,水泡(まめ),ウォの目,バニオンの有無についてもしらべる。

 

歩行の神経学

ガイトン生理学から

脊髄は単に感覚性シグナルを脳に伝え,脳からの運動性シグナルを末梢に伝えるだけの存在ではない.実際,脊髄に備わった固有の神経回路がなければ脳の最も精巧な運動調節機構でさえも,どのような目的ある動作も実行できない.1例をあげると,歩行に必要な下肢の前後運動のための神経回路は脳のどこにも存在しない.運動に必要な回路は脊髄にあって,脳は単にこの回路に対して歩行の開始や終了の指令シグナルを出しているに過ぎない.したがって,適当な条件の下では頚髄レベルで脊髄を切断したネコやイヌでも,ややぎこちないが歩行させることもできる.

 

筋伸張反射

筋紡錘の機能が最も単純な形でみられるのが筋伸張反射(muscle stretch reflex)である。これは,筋が伸展を受けた際に筋紡錘の中心部受容器が伸張を受けて興奮することによって,その筋紡錘の属する筋が収縮ずるという単シナプス反射である。

伸張反射の神経回路:筋紡錘からのIa群線維は脊髄後根に入った後,その枝の1つが脊髄前角の灰白質にある前角運動ニューロンと直接シナプスを形成する。その運動ニューロンは筋紡錘の属する筋を支配している。これが興奮した筋紡錘が反射性シグナルを最短距離でその筋に戻す単シナプス反射である。

二次終末から出るlI群線維にも,前角細胞に単シナプス性に接続するものがあることが知られている。ただし,II群線維の多くは一次終末からのIa群線維の側枝の多くと同様に脊髄灰白質の介在ニューロンに終わり,それらが前角運動ニューロンに対してより遅いシグナルを出すか,又は別の機能に関与している。

 

相反抑制と相反神経支配

伸張反射が1つの筋を興奮させると,同時に拮抗筋を抑制する。これが相反抑制(reciprocal inhibition)と呼ばれる現象で,この現象を生ずる回路を相反性神経支配(reciprocal innervation)と呼ぶ。

 

交叉性伸展反射

刺激が四肢のlつに屈筋反射を誘発して0.2~0.5秒後に,対側の肢が伸展を始める。これが交叉性伸展反射(crossed extensor reflex)と呼ばれるものである。この反射があるために逃避反射によって生ずる体重の移動を村側の肢の伸展で支えることができる。

交叉性伸展反射は最初の痛覚刺激から200、500msecたたないと始まらないので,感覚神経と反対側の前角運動ニューロンの間に多くの介在ニューロンがあることは間違いない。それだけでなく,痛覚刺激が去った後も屈筋反射の後発射よりもさらに長時間の後発射を伴う。このこともまた,この遷延した後発射が介在ニューロン間の反響回路によると推測される理由である。

 

屈筋反射

脊髄動物や除脳動物では,どのような種類の皮膚感覚刺激でも四肢の屈筋を収縮させる傾向があり,そのことで四肢を刺激対象から遠ざけようとする。これが屈筋反射(flexor reflex)と呼ばれるものである。

典型的な形では,屈筋反射はピンや熱などで痛覚を刺激することで最も強く誘発され,このため侵害反射(nociceptive reflex),またはもっと簡単に痛み反射とも呼ばれる。触覚受容器の刺激でも,軽度であるがこの反射を生ずる。もし四肢以外のどこかが疼痛刺激を受けると,その部位は刺激から逃れようとする。この場合,基本的には屈筋反射と同じであっても反射が屈筋に限局されたものではないので逃避反射(withdrawal refIex)と呼ばれる。

 

 

伸張反射の重要性

伸張反射は不随意運動だけではなく随意運動にも関与する。

運動制御メカニズム-γループ

筋収縮のために起こる最もシンプルな大脳からの神経伝達経路はα運動ニューロンを介する錘外線維の刺激である。しかし、実際にはこのシンプルな経路が使用されることは少ない。大脳からの刺激は、初めにγ運動ニューロンの刺激により錘内線維を収縮し、筋紡錘中心部の受容器部分を伸ばすことになる。筋紡錘の興奮は、一次、二次求心性線維を介してα運動ニューロンの刺激、最終的に筋線維の収縮という経路が使用される。この経路は、一度筋に刺激を送った後、感覚神経により脊髄に戻り、再び筋、錘外線維に達して収縮を起こすというもので“γループ” と呼ばれている。γループ経路もまたγ1経路とγ2経路に分けることができる。この一見無駄に思えるような経路は、正確で、適切な筋収縮を可能性にしている。筋収縮に対する様々な情報による影響を可能性にしている。例えば、脊髄レベルでの他の感覚神経からの介在ニューロンプールへの入力による反応は、感覚神経から上位中枢への入力、処理、出力、抑制、加重という行程よりもはるかに速い。

 

歩行の神経学

歩行運動は神経学的には交差性伸展の繰り返しにより起こっている。

 

 

Gait cross

 

 

歩行時の筋機能統合テスト(アプライド キネシオロジーより)

 

歩行運動には、下肢内転筋と対側の上肢内転筋、下肢外転筋と対側の上肢外転筋などの活動の統合も存在する。また、中殿筋と対側の腹筋の統合は、立脚相において中殿筋の収縮が骨盤を保持し、対側の腹筋が骨盤を挙上する。

 

肩関節屈筋群と対側の股関節屈筋群のテスト

肩関節伸筋群と対側の股関節伸筋群のテスト

肩関節外転筋群と対側の股関節外転筋群のテスト

肩関節内転筋群と対側の股関節内転筋群のテスト

大腰筋と対側の大胸筋のテスト

中殿筋と対側の腹筋のテスト

 

Gait flex

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