Knesiology

キネシオロジー

筋肉の状態を評価する場合、過緊張や弛緩といった状態を触診での左右差などにより決めてしまいがちですが、それだけでよいのでしょうか?硬い方が過緊張、柔らかいほうが弛緩ということになるのでしょうか?硬いほうは正常で柔らかいほうが弛緩、硬いほうが過緊張、柔らかいほうが低緊張という組み合わせもあるはずです。それでは、硬さだけでは、単に左右差がわかるだけです。このため、過緊張による可動域制限や筋力テストなどを同時に使用することで判断可能になるのではないでしょうか?

筋に対する治療は過緊張(硬い)筋が柔らかくなるように治療すればよいのでしょうか?
これは因果なぜ過緊張になっているのかを考えなければなりません。これは、過緊張筋を柔らかくすると症状が悪化するケースもあるからです。

それでは過緊張を起こす原因を挙げてみましょう。

1.協力筋の収縮力低下
2.拮抗筋の低緊張
3.筋がサポートする構造の安定性減少
4.ストレイン/カウンターストレインの問題(拮抗筋との問題)
5.筋膜の短縮
6.反射、経絡、椎骨のずれ、固有受容器や起始停止の問題
7.その他栄養学的、循環などの問題
1、協力筋とは、筋肉が作用する場合に同じような働きをする筋肉です。例えば、腕を横から上げる運動、肩関節外転では、三角筋、棘上筋が作用します、どちらか一方の収縮力が弱くなると、他方はその分の負担がかかることになります。これを繰り返すことで、正常な働きを行う筋であっても、過緊張になる可能性があります。協力の収縮力低下を改善しない限り、肩関節外転を続ければまた過緊張が起こるでしょう。

棘上筋の収縮力低下は、三角筋の過緊張を起こし、この過緊張により肩峰下包炎が起こる可能性があるのです。
2.拮抗筋の低緊張
これは上腕二頭筋と三頭筋の例がわかりやすいと思います。上腕三頭筋の緊張度が下がる場合、肘関節は屈曲位になる傾向になり、上腕二頭筋は過緊張あるいは短縮を起こす可能性があります。

3.筋がサポートする構造の安定性減少
例えば、膝関節の後十字靱帯が弛緩してしまっている状態で頸骨上での大腿骨遠位部の前方への安定性が減少する場合、大腿四頭筋が緊張度を増して、後十字靱帯の弛緩をカバーするために緊張度を増さなければならないくなります。これは大腿四頭筋が原因ではなく、膝関節の安定性減少が原因となるわけです。

4.ストレイン/カウンターストレインの問題(拮抗筋との問題)
これは拮抗する筋の間で収縮と弛緩ののバランスが崩れている状態です。

5.筋膜の短縮
これは結合組織の一部である、筋膜が伸長されることなく、長期にわたり短い状態であることにより起こります。一般的にストレッチは筋をストレッチするのではなく、筋膜をストレッチすることが望ましいのです。一部では、筋はストレッチすることにより、何の恩恵も受けることはないとも言われています。

6.反射、経絡、椎骨のずれ、固有受容器や起始停止の問題
筋肉には、さまざまな関連がるといわれています。さまざまな反射、経絡との関連などもあるといわれています。更に筋紡錘やゴルジ腱器官の異常、起始停止部分の骨付着部からの微小剥離なども過緊張を起こすといわれています。

7.その他栄養学的、循環などの問題
血液循環の悪化による金の過緊張は、マッサージ等で改善するものとして知られているのでわかると思います。更に、カルシウムやビタミンEnadoの欠乏により、特に末梢部の筋の過緊張がこる可能性があります。

筋肉は、触診、可動域制限、筋力テストにより評価することが望ましいわけです。

それではそれぞれの筋肉の機能を考えていきましょう。



大腰筋

まずは基本的な情報から

起始:T12-L5の横突起前面、椎体側面、椎間板。
停止:大腿骨小転子。
機能:股関節屈曲、僅かな外旋と内転。
神経支配:腰神経叢、L1,2,3,4.
協力筋:股関節屈曲;大腿直筋,恥骨筋,大腿筋膜張筋,薄筋,長短大内転筋,腰部屈曲;対側の大腰筋,大腿直筋,腰椎伸展;腰方形筋,脊柱起立筋
拮抗筋:股関節屈曲;大殿筋,ハムストリング筋,大内転筋,腰部屈曲;腰方形筋,脊柱起立筋

大腰筋機能

股関節への影響
大腰筋は、腰椎から大腿骨に付着しますので、股関節の機能に関連します。股関節屈曲、外旋、内転を行う筋です。
この筋が過緊張になる場合、股関節外転制限、伸展制限、内旋制限が起こります。

腹筋との関連
復帰の収縮力が低下すると、過緊張あるいは短縮が起こります。これは腹筋による腹腔内圧低下により、腰椎への負荷が大きくなり腰椎を支える大腰筋、起立筋、腰方形筋などの過緊張が起こります。

体幹の捻れ
左右の大腰筋の緊張度が異なる場合、腰部、時には体幹の捻れを起こす場合があります。
それでは大腰筋機能の評価は、視診、触診、可動域制限(ストレッチ)、筋力テストで行います。

視診

深部の筋であるため視診による認識は困難である。立位において過緊張側に腰椎が側方と前方に引かれ、腰椎全体が回旋を起こすが、他の要因でもこのような状態が起こることがあるため、腰椎全体の回旋でだけではなく、筋腹や起始停止触診、ストレッチ、筋力テストなどのよる検査を参照するべきである。

触診:

筋腹:鼠径部の筋腹は大腿神経動静脈の深部に存在するため触知可能である。触診は大腿神経動静脈に損傷を与えないように注意しなければならない。

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起始停止:
起始の触診は腹部の深部、腰椎前面であるため、物理的に触診は不可能である。停止部は腹臥位で坐骨結節の外側の深部に接触した状態で大腿骨の内旋と外旋を起こし、深部で動く小転子を触知することが可能である。

ストレッチ操作

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患者の腹臥位で膝関節90°屈曲位で、股関節30°外転位で下腿を外方に動かし、股関節内旋の制限を検査する。患者の腹臥位で膝関節90°屈曲位で股関節を僅かに約30°外転位で股関節伸展制限を検査する。

筋力テスト

患者は仰臥位において股関節屈曲、外転、外旋の肢位をとる。圧力は下腿前内側に股関節伸展、外転の方向に加える。検者の下肢の接触ポイントはテストのてこ作用の力の必要に応じて変化させる。ほとんどの場合近位下腿への接触によりテストは可能である。筋力の強い患者には遠位下腿への接触が必要となるであろう。圧力の方向は大腿直筋とハムストリング筋作用の間に向ける。
大腿直筋を作用させる場合、股関節の内転と内旋が起こる。更に膝関節屈曲も大腿直筋を作用させる要素となる。内転筋群を作用させる場合、対側の骨盤をテーブルから挙上させる。

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腸骨筋

起始:腸骨窩の上部2/3、腸骨稜の内縁;前仙腸、腰仙、腸腰靭帯;
仙骨の腸骨翼。
停止:大腿骨小転子。
機能:腰筋と共に大腿の屈曲;大腿外旋の補助。
神経支配:大腿神経、L1,2,3.
協力筋:大腰筋、内転筋群、大腿直筋
拮抗筋:大腿筋膜張筋、中殿筋、大殿筋

腸骨筋機能

腸骨筋は、立位において骨盤を前内方に引き役割を果たしており、この筋の収縮力、トーヌスが低下する場合、仙腸関節や腸腰靭帯に過剰な張力が加わることになり、この部位の安定性減少を起すケースがある。拮抗筋である中小殿筋の過緊張も同じような作用を起すことになる。

腸骨筋は盲腸やS状結腸の状態と関連がある。

腸骨筋筋力テストは、鼠径部での大腿神経絞扼時に縫工筋、大腿四頭筋と共に鑑別に使用される。

視診:収縮力が低下することで寛骨上部の後外方への変位が診られる。中殿筋
過緊張によるものと鑑別が必要である。

触診:
筋腹:筋腹は鼠径部で触診可能である。仰臥位で、上前腸骨棘を触診した後、鼡径靭帯に沿って内下方に腸骨筋の筋腹を触診する。
起始停止:起始部分は腹腔内であるため触診は困難であるが、停止部は腹臥位で坐骨結節の外側の深部に接触した状態で大腿骨の内旋と外旋を起こし、深部で動く小転子を触知することが可能である。

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ストレッチ操作:患者の腹臥位で膝関節9 0°屈曲位で、股関節30°外転位で下腿を外方に動かし、股関節内旋の制限を検査する。
患者の腹臥位で膝関節9 0 °屈曲位で股関節を僅かに内転位で股関節伸展制限を検査する。

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筋力テスト:内側線維;患者は仰臥位で股関節の屈曲、外転を起す。外転の角度は、テストの肢位で股関節と仙腸関節を結ぶ線まで外転を行う。検者は近位または遠位下腿の前内側に股関節外転、伸展の方向に圧力を加える。
外側線維;仰臥位の患者に股関節を屈曲させ下肢を挙上させる、股関節15°の内転と外旋を加え保持させる。検者は後外方45°の方向に圧力を加える。

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外側、内側線維の両筋力テストでも、内転筋郡の作用に注意するべきである。また、骨盤の固定が不十分になることでもこれらの筋の代償作用が起こることになる。

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筋力テストは筋の神経学的な反応を見ることのできる貴重な徒手検査法ですが、正確な筋力テストができなければ、神経機能を評価することは難しくなります。検査したい筋の反応を起すための最小限の力でテストし、協力筋の反応を最小限にすることが重要になります。

神経機能評価のためにマニュアル筋力テストを使用する場合、十分に筋力テストに精通する必要があります。