アプライドキネシオロジー 椎間孔5つの因子

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栗原D.C.が専門誌に投稿した記事です。

今回は、アプライド キネシオロジーの基本的なコンセプトを紹介する。アプライド キネシオロジーは筋力テストを使用し、その神経学的な反応の変化から様々な問題を検出し、さらに治療効果の確認を行うものである。筋の神経学的な機能を変化させる因子は多様であるが、アプライド キネシオロジーでは基本的に筋の機能異常を起こすとされている因子が挙げられている。これはアプライド キネシオロジーのロゴにも現されている(図-1)。これらは椎間孔にかかわる5つの機能障害誘発因子とされ、アプライド キネシオロジーでは椎間孔5つの因子と呼ばれている。

ロゴには、人体を中心として大きな三角とそれに重なる円、そして円に5つの大きな球が在る。円は椎間孔を現し、それに上にあるN,NL,NV、CSF、AMCと刻印される球は、筋力テストにおいて機能障害の原因となる椎間孔5つの因子を現している。Nは、各筋を支配する神経に障害が加わることで筋機能障害が起こる状態を意味している。NLは神経リンパ反射を現し、体幹の皮下に存在する反射ポイントの活性化により筋力テストにおける神経学的な反応を抑制する状態が起こるということを示している。NVは神経血管反で、主に頭部に存在する反射ポイントの活性化による筋機能障害の可能性を示している。CSF、これは脳脊髄液を意味し、神経の代謝にかかわるとされている脳脊髄液とこの循環障害が筋機能障害の原因となりうることを現している。椎間孔5つの因子の最後の因子のAMCは、身体の東洋医学的な解釈による経絡が筋機能に関連することを意味している。これら椎間孔5つの因子に関する理論、テスト、治療方法などの情報は後に詳しく説明することにする。筋力テストにより筋機能障害が検出される状態では、まずこれらの因子の関与を考え、テスト治療を行うべきである。椎間孔5つの因子は椎間孔にかかわるとされている筋機能障害をもたらすと考えられている5つの因子であるが、更に筋機能障害を起こす因子が存在する。これらは、検査している筋の局所的な機能障害である。これら3つの因子は、筋紡錘、ゴルジ腱器官、起始停止の障害である。筋紡錘は筋力テストの神経学的な活動に直接かかわる重要な受容器でありこの部位の機能障害は、筋力テストにおける正常な反応を阻止することは容易に想像できると思う。ゴルジ腱器官もまた機能てきな障害を起こすことで筋力テストの結果に影響を及ぼす。アプライド キネシオロジー発祥のきっかけとなった起始停止の障害もまた、筋力テストに影響を及ぼすとされている。以上、椎間孔5つの因子と筋の局所的な問題は、アプライド キネシオロジーの筋力テストを行う上で常に考慮されなければならない。これら8つの因子以外にも筋力テストの弱化を誘発する原因がある。筋は様々な状況下で正常な機能、神経学的な活動を維持しなければならない。例えば、体位では仰臥位、腹臥位、立位、座位、運動では歩行、坂道や階段の上り下り、ジャンプ、前屈、後屈、捻りなどが含まれるような身体運動、化学的な面では、食事、薬剤、栄養学的な異常、内臓や臓器の異常からの影響などが挙げられる。様々な状況における筋機能を評価するためには、その状況を再現した状態で評価しなければならない。この方法は、アプライド キネシオロジーのなかで、多くの医学的な理論を基に、様々な形態のテクニックとして紹介されている。筋力テストにより機能障害を検出しなければならない。

臨床で筋力テストを使用するには、患者の状態を把握し、その状態を解釈する能力がないと非常に難しくなる。長年、AKの講師をやらせていただいていると、“筋力テストは理解できましたが、どう使えばいいのか解らないのですが。何か弱い筋を簡単に見つけ出し、AKのテクニックで治療すれば治る方法はないですか?”というような質問を受ける。どのテクニックにも共通することであるが、単にテクニックだけを患者に施し、患者の状態が改善するというようなものはない。大切なことは、患者の状態がどのようなものであるかを理解し、状態に適したテクニックを施すことである。かぜをひいた患者にメスを取り出して手術する医師はいないであろう。同じように腰痛の患者に烏口腕筋の筋力弱化を治療することは、明白なバイオメカニクスなどその他の関連がない限り不適切になるであろう。患者の状態を把握し、その状態を解釈する能力は、解剖学、生理学、病理学、バイオメカニクスなどの基礎医学、理学検査法、整形外科的な検査法、神経学的な検査法などの臨床診学などを学ぶことにより養われる。ガンステッド、ディジャネット、グッドハート、トムソン、フェイなど各テクニックの開発者は、すべて十分な基礎医学、診断学を学んだ後、テクニックを開発している。これら創始者は基礎医学診断などの豊富な知識を基にテクニックを使用しているそのため有効なテクニックとなるわけであるが、これらの知識がなく、上辺だけのテクニック、手法を真似するだけでは、効果的な治療にならないのは明白である。次回は椎間孔5つの因子と局所的な問題について説明する。