アプライドキネシオロジー N神経支配

5ivf-N

栗原D.C.が専門誌に投稿した記事です。

前回、椎間孔5つの因子についての概略した。今回から椎間孔5つの因子の各因子について説明する。椎間孔5つの因子について、まず初めに考慮するべきことは、Nerve、Innervation神経支配である。言うまでもなく、筋は単体ではその機能を果たすことはない。このため、筋力テストを行うということは、筋の収縮機構と神経機能を評価することになる。神経機能の評価としての筋力テストで異常が検出される場合、その筋の神経支配の異常を考慮することは、当然のことである。カイロプラクティックで言われるサブラクセーションによる神経機能異常は、脊髄神経で支配される筋にも異常を起こすことになる。このためそれぞれの筋の神経支配レベルに存在するサブラクセーションは、筋力テストにおける弱化を起こす原因となる。これが椎間孔5つの因子のNを表しているが、臨床的には、脊髄神経が椎間孔を通過して該当する筋に神経を送るまでの神経の走行経路における異常も考慮しなければならない。例えば、膝関節障害において、大腿四頭筋の筋力テストを行っている場合、神経支配は、脊髄神経L2,3,4であり、第2,3,4,5腰椎のサブラクセーション、大腿神経の走行で神経障害の起こりやすい部位、鼠径部での神経絞扼を考慮しなければならない。この椎間孔5つの因子のN,神経支配に対するアプローチは、椎骨ではアジャストメントであり、神経走行経路での絞扼の場合、それそれに対応した治療が必要になる。椎骨に対するアジャストメントであるが、例えば先ほどの大腿四頭筋の場合、第2,3,4,5腰椎の何れかに直接スラストを加えると言うことではない。この部位で神経に対する何らかの刺激が加わっている可能性が高いことは確かであるが、その原因は、硬膜袖の異常緊張、椎間板の変性、椎骨の変形、靭帯の肥厚、椎間関節の浮腫、サブラクセーション、フィクセーション、ハイパーモビリーティーなど多様な原因が考えられる。このためこの部位の問題による神経機能異常をすべて直接的なスラスト、アジャストメントによる解決は不可能になる。このような状態を判断するためにも、初診時の患者に対する理学検査が重要になる。この結果、膝関節障害に対して、大腿四頭筋の弱化を治療するケースで、その神経支配に問題があり、第5腰椎の可動性亢進と腸腰靭帯の伸長により起こっている場合、この部位へのサイドポスチャーでのアジャストメントは禁忌である。第5腰椎は可動性亢進であり、非常に不安定な状態であり、これをセットアップにより最大可動域に置いて、更にスラストを加える場合、靭帯構造に伸長を加えて安定性を減少させることになる可能性がある。最悪の場合捻挫を引き起こす可能性もある。適切な治療は、第5腰椎の可動性亢進に対する治療であり、詳細は第5腰椎の可動性亢進の原因により異なるが、それが第12胸椎のフィクセーション、骨盤カテゴリー?、ロベットリアクターによる環椎サブラクセーション、ストレイン/カウンターストレインの問題による大腰筋過緊張、中殿筋過緊張、下部腹筋の弱化、股関節障害、回内足、その他様々な問題が考えられるが、更に考慮しなければならないのは患者が受けていた治療方法で不適切なものがないか、あるいは患者自身が不適切な運動療法などを行っていないかも考慮するべきである。ストレッチと言うと一般的にはよいことであると捉えがちであるが、その方法によっては伸長された靭帯をさらに伸長することになりかねない。これを患者自身はよいことであると信じて続ける場合、治療効果は減少するだけではなく、まったく効果を示さないことになるであろう。このため問診による患者の日常活動の把握が重要になる。繰り返すようだが、AKを使って検査治療を行うためには、理学検査により患者の状態を把握しておくことは重要であり、必要不可欠である。

このように、神経支配による筋機能異常は、椎骨のサブラクセーションにより起こるとは限らないため、筋力テストによる筋の弱化が該当部位の椎骨の棘突起へのセラピーローカリゼーションにより改善し、神経支配による筋弱化が判明してた状態であっても、これはその部位に筋機能異常を起こす問題があることがわかるだけで、その問題がどのような問題であるのかを示しているわけではない。それそれの問題に対する適切な処置が必要である。

一方、大腿四頭筋が大腿神経の鼠径部で筋機能異常が起こっている場合、鼠径部の外傷の有無、鼡径ヘルニアに対する外科処置、大腰筋、腸骨筋過緊張、骨盤変位による鼡径靭帯の伸長などを考慮し、チャレンジにより筋機能の改善をテストする。検査結果により適切な治療加える。

椎間孔5つの因子の神経支配の問題による筋機能障害を改善するためには、各筋を支配する脊髄神経の脊椎レベル、更に神経走行経路の解剖の知識が必要である。脊椎に関しては、脊椎間の相互関係、バイオメカニクス、脊椎の触診、モーションパルペーションなど通常の脊柱の治療に精通していなければならない。

AK筋力テストにより筋機能異常が検出され、神経支配の異常が検出された場合、該当レベルの脊椎を他の検査を行うことなくアジャストメントを加えることは危険であるため、必ず検査を行い、その結果に従って筋機能改善を試みるべきである。

次回は、椎間孔5つの因子の次の因子である。神経リンパ反射について説明する。