Extremity

四肢

まずは、四肢の疾患について考えて見ましょう。

末梢神経の絞扼とその症状について
各神経により支配される筋のリストを載せておきます。
神経と支配筋

上肢

橈骨神経:上腕三頭筋、腕橈骨筋、橈側手根伸筋(長、短)
後骨間神経:短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、指伸筋、小指伸筋、示指伸筋、回外筋、長母指外転筋、長、短母指伸筋、
正中神経:円回内筋、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋、短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、虫様筋
前骨間神経:深指屈筋(第2、3指)、長母指屈筋、方形回内筋
尺骨神経:尺側手根屈筋、深指屈筋(第4、5指)、小指球筋(小指外転筋、小指対立筋、小指屈筋、短掌筋)、虫様筋、掌側骨間筋、背側骨間筋、短母指屈筋、母指内転筋
筋皮神経:烏口腕筋、上腕二頭筋、上腕筋
肩甲上神経:棘上筋、棘下筋
腋窩神経:三角筋、小円筋
肩甲背神経:肩甲挙筋、大、小菱形筋
肩甲下筋神経:肩甲下筋(上下)、大円筋(下)
胸背神経:広背筋
長胸神経:前鋸筋
鎖骨下筋:鎖骨下筋神経
外側胸筋神経:大胸筋
内側胸筋神経:大胸筋、小胸筋
下肢

上殿神経:中、小殿筋、大腿筋膜張筋
下殿神経:大殿筋、内閉鎖筋、双子筋、大腿方形筋
腰神経叢:大腰筋
大腿神経:腸骨筋、恥骨筋、縫工筋、大腿四頭筋
閉鎖神経:恥骨筋、短内転筋、長内転筋、大内転筋、薄筋、外閉鎖筋
総腓骨神経
浅腓骨神経:長腓骨筋、短腓骨筋
深腓骨神経:前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋、第3腓骨筋、短趾伸筋、短母趾伸筋、足背骨管神経
脛骨神経:ハムストリング筋、大内転筋、足底筋、腓腹筋、膝窩筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋、
外側足底神経:小趾外転筋、足底方形筋、小趾屈筋、小趾対立筋、母趾内転筋斜頭、足底骨間筋、虫様筋???、足背骨間筋、
内側足底神経:短趾屈筋、母趾外転筋、短母趾屈筋検査では筋力テストに末梢神経の状態をテストしますので、


胸郭出口症候群 TOS

前斜角筋症候群
前斜角筋、中斜角筋、第1肋骨の間で腕神経叢と鎖骨下動静脈が圧迫されることで上肢に症状が起こる。筋の過緊張が存在する場合、初めに腕神経叢下部に影響が現れるケースが多く見られる。圧迫が長期に渡るとC5?T1神経根を含む腕神経叢全てが影響を受ける。鎖骨下動静脈への影響は、上肢の循環の問題を引き起こす。

肋鎖症候群
腕神経叢と鎖骨下動静脈の圧迫は、鎖骨、第1肋骨の間で起こる。
症状は前斜角筋症候群と同じ。

小胸筋症候群
腕神経叢と腋窩動静脈の圧迫は、小胸筋、烏口突起、上腕骨頭の間で起こる。
症状は前斜角筋症候群と同じ。

症状:手や指のしびれ(度々、上腕、肩への放散痛を伴う)
手の冷え
上肢の各神経の神経症状、特に尺骨神経支配域


整形外科テスト:
アドソンテスト

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斜角筋過緊張、脛肋による圧迫患者は座位または立位(症状が現れる体位)で橈骨動脈の脈をとり患者に頚椎の回旋(同側あるいは対側)と顎を挙上させる。陽性は、脈の減退または消失
肋鎖テスト

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鎖骨と第1肋骨の間隙が狭くなることで圧迫を受ける。患者の座位または立位(症状が現れる体位)で橈骨動脈の脈をとり、患者に胸を張らせて頚椎を屈曲させる。陽性は、脈の減退あるいは消失

過外転テスト

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小胸筋過緊張による圧迫
患者の座位あるいは立位で橈骨動脈の脈をとりながら外転を加える。陽性は、脈の減退あるいは消失
筋力テスト:神経に圧迫がある場合、末梢部が最も影響を受けやすいため、末梢の筋を使用する。母指対立筋(正中神経)、小指対立筋(尺骨神経)


鑑別診断:母指対立筋、小指対立筋テストを用いる。
前斜角筋症候群:?正常筋:首の回旋により弱化。
?弱化筋:屈曲位で改善
?関与する神経に支配される筋はすべて弱化

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肋鎖症候群:正常筋:吸気を保持させて肩を後ろに引き、肩関節の伸展位30°で弱化。
弱化筋:屈曲位で改善
正常筋:肩甲挙筋、前鋸筋、横隔膜、鎖骨下筋、菱形筋、棘下筋、棘上筋。

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小胸筋症候群:?正常筋:肩関節外転と伸展により弱化
弱化筋:屈曲、内転位で改善
正常な筋:肩甲挙筋、前鋸筋、横隔膜、鎖骨下筋、菱形筋、棘上筋、棘下筋(小胸筋、大胸筋、広背筋、肩甲下筋、大円筋)
注意:完全な麻痺(感覚、運動)が存在し、麻痺が長期に渡っている場合、改善は最小となる。
外傷などにより上肢全体に重度の症状がある場合、損傷部に炎症などが存在する可能性があるため局所への治療は避ける。

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考えられる原因:前斜角筋過緊張、中、下部僧帽筋、菱形筋の弱化、胸腰部回旋変位、小胸筋過緊張、鎖骨の下方変位など

治療:筋の過緊張改善、筋紡錘、ゴルジ腱器官
筋の弱化の修正、
矯正(胸腰部、頸椎、骨盤、前方頚椎、鎖骨、第1肋骨)


肩甲上神経症候群

この障害は、棘上筋、棘下筋に萎縮を起こす。肩甲上神経(C5,6)は、肩甲切痕を通り肩甲窩に至る。棘上筋に枝を送り、頚切痕を通る際、肩鎖関節や肩甲上腕関節の浮腫などにより圧迫を受ける。さらに、肩甲骨が不安定な場合(肩甲骨が前外方に変位する場合など)、その走行のため神経に伸張が加わる。

症状:肩関節周囲の非限局性の痛み、肩甲骨の動きによる痛みの増加、棘下筋の萎縮

解剖:肩甲上神経は上神経幹からの枝で、肩甲切痕(上肩甲横靭帯)を通った後、棘上筋に枝を送り、さらに、頚切痕(下肩甲横靭帯)を通り棘下筋に至る。C5,6

神経走行はこちらを参照してください・

原因:姿勢、肩関節炎

関与する筋:棘上筋、棘下筋、菱形筋、僧帽筋、前鋸筋、大胸筋、小胸筋

筋力テスト:棘下筋、前鋸筋、菱形筋、棘上筋。

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更に、棘下筋テストで肩を前方に変位させ、肩関節と肘関節の90°屈曲位でテストする。弱化、または、弱化の悪化が見られる場合、肩甲上神経症候群が疑われる。

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治療:肩甲骨を固定する筋(前鋸筋、菱形筋、大、小胸筋、肩甲下筋、棘下筋)の治療
矯正、下部胸椎後方変位、下部頚椎前方変位
小胸筋過緊張(下部僧帽筋の弱化)。

治療は、胸椎の後弯増加を修正する方法で、上肢帯の前内方に変位している状態を改善してあげれば、肩甲上神経への伸長が軽減されるということです。


円回内筋症候群

これは、正中神経がその走行において円回内筋の尺骨頭と橈骨頭の間で圧迫を受けることで起こる。正中神経は、円回内筋を経過した後、尺側手根屈筋、深指屈筋(第4、5指)を除く手関節屈筋を支配する。この障害は、前腕の回内運動を繰り返すような作業を行うことで起こりやすい。

症状:

運動障害:母指から中指の屈曲運動、母指対立運動、字が書き難いなど、猿手変形;母指球の萎縮
知覚障害:知覚異常主に手掌母指、示指、中指

解剖:正中神経は、腕神経叢の内側神経束と外側神経束から起こり上腕内側を走り前腕の筋、肘関節部の筋、手掌橈側の皮膚などを支配する。上腕部への支配はない。

原因:前腕の回内運動を繰り返すような作業を行うことで起こりやすい。

関与する筋:円回内筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、深指屈筋(第2,3指)、長掌筋、長、短母指屈筋、短母外転筋、母指対立筋、方形回内筋。

筋力テスト:円回内筋、方形回内筋、長母指屈筋、短母指外転筋、母指対立筋などの弱化
母指対立筋テスト:正常筋:肘関節屈曲回内位、肘関節伸展回外位で弱化。
弱化筋:肘関節の僅かな屈曲位、回内の中間位で改善。

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続きは次回更新時に